転移性膵がんで「完全奏効」…新薬候補「ネスパリブ」の可能性

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標準治療併用群で客観的奏効率53.8%…3年以上の長期生存例も

画像=オンコニック・セラピューティクス

治療選択肢が限られる転移性膵がんで、生存期間の延長や完全奏効の可能性を示す初期臨床データが示された。オンコニック・セラピューティクスの二重標的抗がん薬候補「ネスパリブ」が、実患者を対象とした研究で注目すべき治療反応を示した。

オンコニック・セラピューティクスは、転移性・進行性膵がん患者を対象に進行中のネスパリブ(Nesuparib、JPI-547)第1b/2相試験について、第1b相の一部結果が米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026)発表前の抄録として公開されたと発表した。同社がネスパリブの実患者データを対外的に公表するのは今回が初めてとなる。

ネスパリブは、タンキラーゼ(Tankyrase)阻害と合成致死に基づく作用を組み合わせた二重標的の抗がん薬候補である。合成致死は、がん細胞が特定の遺伝子損傷や修復欠損を抱える状態で、別の生存経路を遮断し、がん細胞を選択的に死滅させる戦略だ。ネスパリブは、こうした作用を通じて、がん細胞の生存と転移に関与する経路を同時に狙うよう設計された。

抄録には、2025年12月31日までに収集された解析結果が盛り込まれた。研究は、転移性の進行性膵がん患者27人を対象に、一次治療の環境で実施した。ネスパリブを、既存の標準治療であるゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用療法(GemAbraxane)またはmFOLFIRINOXと併用投与する設計である。

最も目を引く結果はGemAbraxane併用群で確認された。この群の客観的奏効率(ORR)は53.8%、病勢制御率(DCR)は92.3%だった。客観的奏効率は治療後に腫瘍が一定水準以上縮小した患者の割合を指し、病勢制御率は腫瘍が縮小した患者に加え、これ以上進行しなかった患者まで含む指標である。

特にGemAbraxane併用群では、転移性膵がん患者1人で、標的病変のがん細胞が完全に消失した完全奏効が確認された。この患者は全生存期間が3年を超えた状態で、長期生存中と把握されている。

膵がんは早期発見が難しく、診断時点ですでに進行性または転移性の段階であることが多いことから、代表的な難治がんに挙げられる。転移性膵がんの治療では、腫瘍径の縮小だけでなく、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が重要な評価指標とされる。今回の解析基準日(データカットオフ)時点で、GemAbraxane併用群の無増悪生存期間の中央値は未到達だった。全生存期間の中央値は14.2カ月と集計されたが、抄録では当該データはまだ成熟しておらず、追加の追跡観察が続いていると説明した。

mFOLFIRINOX併用群でも抗腫瘍効果が観察された。この群の客観的奏効率は38.5%、病勢制御率は92.3%だった。無増悪生存期間の中央値は7.33カ月、全生存期間の中央値は18.5カ月と報告された。両併用群とも病勢制御率が90%を超えた点は、既存治療では制御が難しかった転移性膵がん患者群において意味のあるシグナルと受け止められる。

既存の標準治療成績と比べても、後続研究の根拠となり得る可能性を示した。転移性膵がんの一次治療に用いられるGemAbraxane療法は、グローバル臨床試験MPACT研究で、客観的奏効率23%、病勢制御率48%、全生存期間の中央値8.5カ月程度と報告されている。ただし、今回のネスパリブ併用データは初期臨床段階の限られた結果であるため、より多くの患者を対象とした後続試験で有効性と安全性を確認するプロセスが必要となる。

オンコニック・セラピューティクスは、これに先立つ非臨床研究で、ネスパリブにがん細胞の転移阻止と耐性抑制の可能性があることを確認したと説明した。今回のASCO 2026抄録公開は、こうした作用機序が実患者を対象とした臨床でも治療反応につながり得るかを確かめる初期段階に当たる。

ネスパリブの開発対象は膵がんに限らない。この候補物質は、膵がん、胃がんおよび胃食道接合部がん、小細胞肺がんの3つのがん種で、米国食品医薬品局(FDA)の希少疾病用医薬品指定を受けた実績がある。同社は今回のデータを契機に、ネスパリブの多がん種治療薬としての可能性や、グローバル製薬企業との協業に向けた議論への期待も高まるとみている。

現在、同社はGemAbraxaneとネスパリブの併用療法で第2相試験に入っている。同社は、転移性膵がんが代表的な難治がん領域であることを踏まえ、完全奏効例と3年以上の長期生存データはネスパリブの開発可能性を示す根拠だとし、後続試験で治療ポテンシャルをさらに確認する方針を示した。

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