
一部の高齢者では、タンパク質不足が問題になり得ます。2016~2018年の韓国人調査で、成人全体の1日総タンパク質摂取量/(体重1kg当たり摂取量)は、男性83.6g/(1.17g)、女性59.9g/(1.05g)でした。
65歳以上では男性64.3g/(0.9g)、女性47.6g/(0.84g)と、加齢に伴って摂取量が減るのは事実です。一方で、RDA(タンパク質の1日推奨摂取量0.8g/kg)に対しては男性113%、女性105%を摂取していました。ただ、「個人差があるため」、タンパク質摂取が不足している高齢者がいる可能性はあります[1]。
筋肉だけを見ると動物性タンパク質のほうがよいのでしょうか?
タンパク質摂取が不足している方、あるいは不足を心配している方はどうすればよいのでしょうか。筆者が目にしたソウル市江南区庁のカードニュースには、次のように記されていました[2]。
「高齢者はタンパク質摂取が不足してはいけない。タンパク質は筋肉をつくる材料で、筋肉が不足すると転倒リスクが高まるため、タンパク質摂取をしっかり行う必要がある。そのためには動物性・植物性タンパク質を区別せず、偏らずにまんべんなく食べるのがよい」
一般的な説明ですが、タンパク質の種類に関係なく「まんべんなく食べる」とする点には問題があります。「偏食せず、バランスよく食べるのが健康によい」という教育を受けてきた人にとっては正解のように聞こえます。しかし、動物性・植物性を区別せずにタンパク質を摂取するよう勧めるのは、科学的な助言とは言えません。
理由は次の通りです。
最近(2025年)、英国クイーンズ大学で「動物性または植物性タンパク質が筋肉に及ぼす影響」に関する30本の無作為化比較試験(RCT)を分析した結果、「筋肉量」の観点では動物性が植物性よりわずかに優位な効果(a small beneficial effect)を示しました。
ただし、その効果は60歳以下の若年層に限られ、60歳以上では差がありませんでした。動物性タンパク質は大豆タンパク質とは差がなく、大豆以外の植物性タンパク質と比べると「筋肉量」増加効果がわずかにありました。しかし、実生活で重要な「筋力」と「身体活動能力」の面では、両者に差はありませんでした[3]。
筋肉量増加という点では、「動物性タンパク質」がわずかに優位なのは事実です。しかし動物性タンパク質は、「早期死亡」という深刻な問題を引き起こします。
筋肉を少し増やそうとして健康寿命を失うとしたら?
2020年、米国国立衛生研究所(NIH)が約40万人を約16年間追跡した、史上最大規模の食習慣と死亡率の研究では、動物性タンパク質の摂取が多いほど早期死亡率が高くなりました。逆に、植物性タンパク質の摂取が多いほど早期死亡率は低くなりました[4]。
2020年の米ハーバード大学とオランダ・エラスムス大学の共同研究(対象者35万人、平均13年追跡)でも、動物性タンパク質摂取が増えるほど死亡率は上昇し、植物性タンパク質摂取が増えるほど死亡率は低下しました(下のグラフ)[5]。

理由はこうです。動物性タンパク質を主に摂取する食事(肉食)には、コレステロールと飽和脂肪が多く含まれ、食物繊維は全く含まれないため、高血圧、心臓病、糖尿病、肥満、動脈硬化、痛風、腎臓病、便秘、大腸がんなど各種慢性疾患の原因になります。
一方、植物性タンパク質を主に摂取する食事(菜食)にはコレステロールが全くなく、飽和脂肪は少なく、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、抗酸化成分が多く含まれるため、慢性疾患はむしろ予防されます[6, 7, 8]。
動物性タンパク質から得るエネルギーの3%を植物性タンパク質に置き換えると、全死因死亡率が10%、心血管疾患死亡率が12%低下します。植物性タンパク質で5%を置き換えると、全死因死亡率が24%、心血管疾患死亡率が22%まで低下します[9]。
全体的な健康とは無関係に、筋肉量の増加だけに関心がある方は、動物性タンパク質を主に摂ってもよいでしょう。しかし、筋肉量だけでなく健康に長く生きることまで考えるなら、植物性タンパク質を主に摂るほうがはるかによい選択です。
動物性・植物性タンパク質を区別せずにまんべんなく摂ると、病気もまんべんなく増えて短命になる可能性があります。サルコペニア予防には植物性タンパク質が最善です。
ソン・ムホ 医学博士、整形外科・生活習慣医学専門医

参考文献
1. KW Kim, HA Park, YG Cho, AR Bong. Protein intake by Korean adults through meals. Korean Journal of Health Promotion 2021;21(2):63-72.
2. 江南区庁 https://www.gangnam.go.kr/office/wellaging/board/wellaging_cardnews/10/view.do?mid=wellaging_cardnews
3. RJ Reid-McCann, SF Brennan, NA Ward, et al. Effect of plant versus animal protein on muscle mass, strength, physical performance, and sarcopenia: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutrition Reviews 2025;83(7):e1581-e1603.
4. J Huang, LM Liao, SJ Weinstein, et al. Association between plant and animal protein intake and overall and cause-specific mortality. JAMA Intern Med 2020;180(9):1173-1184.
5. Z Chen, M Glisic, M Song, et al. Dietary protein intake and all-cause and cause-specific mortality: results from the Rotterdam Study and a meta-analysis of prospective cohort studies. Eur J Epidemiol 2020;35:411-429.
6. M Nestle. Animal v. plant foods in human diets and health: is the historical record unequivocal? Proceedings of the Nutrition Society 1999;58(2):211-218.
7. A Fehér, M Gazdecki, M Véha, et al. A Comprehensive Review of the Benefits of and the Barriers to the Switch to a Plant-Based Diet. Sustainability 2020;12(10):4136.
8. W Khalid, MS Arshad, MM Ranjha, et al. Functional constituents of plant-based foods boost immunity against acute and chronic disorders. Open Life Sciences 2022;17(1):1075-1093.
9. Z Chen, M Glisic, M Song, et al. Dietary protein intake and all-cause and cause-specific mortality: results from the Rotterdam Study and a meta-analysis of prospective cohort studies. European Journal of Epidemiology 2020;35(5):411-429.
