寝たままでできる10分運動、高齢者やリハビリ患者に良いというが…何が違う?

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東京農工大学「筋肉と脳の通信網、すなわち神経適応の再設計が目的」…腹部の活性化、体幹―脚の連動、脚の協調

女性が仰向けで天井を見上げる姿勢(仰臥位)をとっている。高齢者やリハビリ患者のために「寝たままでできる1日10分運動」プログラムが日本で開発された。この運動は筋肉を増やすのではなく、筋肉と脳の「協調性」を高めることを目的としている。写真=ゲッティイメージバンク

高齢者やリハビリに取り組む患者に適した「寝たままでできる1日10分運動」プログラムが日本で開発された。東京農工大学工学部の研究チームは、天井を見て仰向けになる姿勢(仰臥位)でわずか10分行う協調運動が、高齢者やリハビリ患者の身体バランスと敏捷性を大きく改善し得ることを明らかにしたと発表した。協調(Coordination)とは、脳が神経を介して筋肉を滑らかに、無理なく、効率よく動かす能力のことだ。

研究チームが開発した「寝たままでできる1日10分運動」の狙いは、単に筋肉を増やすことではなく、筋肉と脳の間の通信網である「神経適応」を再設計する点にある。人体を精密な機械システムとして捉え、質量の大きい頭部と胸郭を安定して制御するために、この運動プログラムを作成したと研究チームは述べている。

この運動の第1段階は「腹部の活性化」だ。へそ周囲を9つの領域に分け、指先で押したときに腹筋で押し返すように行う。普段は意識しにくい腹部の筋肉に改めてスイッチを入れ、脳が体幹の存在を明確に認識できるようにする。

第2段階は「体幹と脚の連動」だ。仰向けの状態で腰を床にしっかり密着させたうえで、臀部をわずかに持ち上げる。これにより体幹と脚が一体となって動くように調整する。歩行時に上半身がぶれないよう支える、頼もしい土台になる。

第3段階は「脚の協調」だ。脳と筋肉の協調性を高め、脚の協調機能を改善する。内容は「足指じゃんけん」と「かかと押し出し」からなる。足底の筋肉を意識的にコントロールし、足首を背屈させたまま脚を伸ばす練習は、実際に歩く際にかかとが床に接地する瞬間の衝撃を吸収し、バランスを保つための基礎となる。

研究チームは男性17人を対象に身体能力および静的バランスの実験を、男女22人を対象に運動学的解析の実験を行った。参加者は2週間にわたり「寝たままでできる1日10分運動」を継続した。

研究結果によると、筋肉の大きさに変化はなかった一方で、静的バランス能力と敏捷性が目に見えて向上した。敏捷性を測るサイドステップ回数は平均約45.4回から約48.6回へと有意に増加した。特に動作中の頭部と胸郭の不要な揺れが減少し、運動効率が最大化する効果が確認された。

この研究結果(A supine exercise program linking trunk stability with lower extremity coordination is associated with improved body balance and agility: A study using randomized crossover and pre-post-trial designs)は最近、国際学術誌 《PLOS One》 に掲載された。

図A/A'は腹部9区画のスイッチオン、図Bは腰部を床に密着させた後の臀部挙上、図Cはかかとを押し出しながら脚を伸ばす動作、図Dは足指じゃんけんを示す。写真=東京農工大学工学部 研究チーム

◇寝たままでできる10分運動の方法とコツ

1. お腹の「9区画」を目覚めさせる(腹部の活性化)

腹筋はいくつもの部位に分かれている。普段使っていない腹部の隅々にスイッチを入れる工程といえる。へそを中心に碁盤目状の9区画があると想像する。指先で1区画ずつ順にぐっと押し、腹筋で指を「押し返す」感覚でお腹にしっかり力を入れる。1区画につき5秒、力を入れて緩めるのを繰り返し、9区画全体をなぞる。脳に「ここにも筋肉があった」と認識させるのが目的だ。

2. 骨盤を密着させてから臀部を上げる(体幹―脚の連動)

単純な「ブリッジ」動作とは異なり、腰と脚を強固に一体化させる練習である。仰向けで膝を立て、腰の後ろに隙間ができないよう床に密着させる。腰が床から浮かないよう保ちながら、臀部をほんの少しだけ持ち上げる。腹部と大腿が別々に動かず、同時に動くよう身体に学習させる工程だ。

3. 足指じゃんけんとかかと押し出し(脚の協調)

歩行の基礎となる足底と脚の調和を整えるトレーニングだ。仰向けで歩行動作を事前に練習するのと同じだと考えられる。第1段階は足指じゃんけん。チョキは親指だけを上に立てる(親指を立てる)か、逆に親指だけを下に曲げる(親指を曲げる)。グーは5本の足指を関節が見えるほど足底側へ強く丸め込む。パーは扇を広げるように足指の間をできるだけ大きく開く。第2段階は、かかとを押し出しながら脚を伸ばす。足指じゃんけんの後、足首を身体側へしっかり引いた状態(背屈)を保つ。そのまま、かかとで床をなでるように脚をゆっくりまっすぐ伸ばす。足底のスイッチを入れた状態で脚を伸ばし、実際に歩くときに最も重要な「かかと接地」動作でのぶれを抑える。

[よくある質問]

Q1. 筋肉が新たに増えていないのに、運動の効果があるのはなぜですか?

A1. この運動の目的は筋肥大ではなく神経適応にあります。脳が筋肉へ送る信号の仕組みを効率化することで、筋量の変化がなくても身体の制御能力やバランス感覚を短期間で高めます。

Q2. なぜあえて寝たままで運動する必要があるのですか?

A2. 仰向け姿勢は重力負荷が最も小さく、生体力学的に最も安定した状態だからです。この状態では、立位で過度に緊張しやすい抗重力筋の力を抜き、体幹と脚の精密な制御能力を養うことに集中できます。

Q3. 1日10分という短時間でも十分ですか?

A3. はい。研究結果では、1日1回10分を2週間続けるだけでも、静的バランス能力と敏捷性が目に見えて改善しました。短時間でも、脳と筋肉の間の通信網を再設定するのに十分な刺激になります。

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