
近年、減量と血糖管理を目的とした肥満治療薬の使用が広がるにつれ、副作用を適切に管理する重要性も高まっている。
ノボ ノルディスクの「ウゴービ(一般名:セマグルチド)」は、体内の食欲調節ホルモンである「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)」に近い作用を示す。自律神経系と内分泌系を統括する脳の視床下部に働きかけ、満腹感を高めて食欲を抑える仕組みだ。
イーライ リリーの「マンジャロ(一般名:チルゼパチド)」は、これに加えてGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体にも結合するため、より強力な食欲抑制効果を示す。これらの治療薬はいずれも正式な臨床試験で有効性と安全性が確認されており、肥満のある人が使用すれば減量が期待できる。
注意したいのは、一部で副作用が起こり得る点だ。約6万6000人を対象とした最新の大規模研究では、GLP-1系の肥満治療注射薬を使用した患者で、膵炎の発症リスクがわずかに上昇したことが示された。米国食品医薬品局(FDA)の有害事象報告データによると、GLP-1注射薬に関連する膵炎の30%は投与開始後1カ月以内に、約半数は投与開始後3カ月以内に発生していると報告されている。
これは、これらの治療薬が直接膵臓を傷つけるというより、薬剤使用によって体重が急激に減少することが背景にある。体重が週に1.5kg以上のペースで急速に減ると、肝臓からのコレステロール分泌が増える一方、食事量も減ることで胆汁分泌と胆嚢の運動がともに低下する。さらにGLP-1注射薬が胆道の運動をいっそう鈍らせ、胆泥(たんでい)や胆石ができやすい環境が生じる。こうしてできた胆石が膵管を塞ぐと、急性膵炎につながり得る。
特に肥満治療薬を使い始めると、初期に軽い吐き気や消化不良を経験するケースが多く、深刻に受け止めない人も少なくない。しかし、△週に1.5kg以上の体重減少 △薄い灰色の便 △上腹部の不快感や膨満感(お腹が張って重苦しい感じ)などが現れた場合、胆石や膵炎の前兆症状である可能性がある。
イ・シヨン氏(カンブク サムスン病院 消化器内科 教授)は、「治療薬の投与後、単なる不快感にとどまらず、みぞおちの先端や左上腹部に刺すような激しい痛みが出る場合は、急性膵炎を疑うことができる」と助言した。
同教授は「膵炎では、仰向けに寝ると腹部が張って痛みが強くなり、体を前に丸めると痛みが和らぐ傾向がある」とし、「痛みが腹部から脇腹や背中まで広がる、あるいは発熱や激しい嘔吐などが出る場合は、ためらわずに医療機関を受診してほしい」と付け加えた。
ただし同教授は、「最新の研究結果では、GLP-1注射薬そのものが膵炎の発症や再発リスクを高めるという明確な根拠はない」としたうえで、「膵炎の既往があるという理由だけで肥満治療薬の治療上のメリットを手放す必要はないが、個々のリスク因子を事前に確認しておくことが重要だ」と説明した。
