MRIで病変が重症に見えてもすぐに手術はしない⋯脊椎専門医がまず見る3つのポイント

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釜山ヒュ病院のパク・マンギュ院長「脚の筋力、歩行能力、症状とMRI所見が一致しているかを併せて確認すべき」

腰が痛い。お尻から太もも、ふくらはぎまでしびれる。脊柱管狭窄症が原因なのか、椎間板ヘルニアが原因なのか……。手術だけが解決策ではないが、手術を受けるとしても、本当の原因となっている病変がどこにあり、何なのかをまず明確にしなければならない。それが治療と回復に向けた第一歩となる。写真=クリップアートコリア
腰が痛い。お尻から太もも、ふくらはぎまでしびれる。脊柱管狭窄症が原因なのか、椎間板ヘルニアが原因なのか……。手術だけが解決策ではないが、手術を受けるとしても、本当の原因となっている病変がどこにあり、何なのかをまず明確にしなければならない。それが治療と回復に向けた第一歩となる。写真=クリップアートコリア

MRIを撮ったところ、「脊柱管がかなり狭くなっている」と診断された。別の患者は、「椎間板が大きく突出して神経を圧迫している」と説明を受けた。

脊椎手術を決める際、MRIは非常に重要な情報となる。しかし、画像上で病変が重症に見えるという理由だけで、すぐに手術を決めるわけではない。

実際に手術をするかどうかを分ける基準は別にある。釜山ヒュ病院のパク・マンギュ院長(国際脊椎内視鏡教育センター長)は、「手術を決める前に最初にすべきことは、この患者の病変が本当に手術を必要とする状態なのかを正確に見極めることです」と話す。

パク院長は、両側脊椎内視鏡(UBE・Unilateral Biportal Endoscopy)を中心に、国内外の医療関係者への教育や学術活動に取り組んできた脊椎外科医だ。体に2つの小さな孔を開け、一方から内視鏡、もう一方から手術器具を入れて病変を精密に取り除く低侵襲手術法である。切開と組織損傷を抑え、回復が早いという利点がある。

UBEは韓、特に釜山地域でさまざまな適症に対応できるまで展し、世界各地にがっている。  2024年以降、パク院長を訪ねて釜山まで足を運んだ医師は、世界各地から140人を超える。

脊柱管狭窄症でも椎間板ヘルニアでも、手術をする前にいくつか確認すべき点がある。パク・マンギュ院長(写真中央)が2023年、インド脊椎内視鏡学会で参加医師らに両側脊椎内視鏡(UBE)手術をライブで講演している。写真=ヒュ病院
脊柱管狭窄症でも椎間板ヘルニアでも、手術をする前にいくつか確認すべき点がある。パク・マンギュ院長(写真中央)が2023年、インド脊椎内視鏡学会で参加医師らに両側脊椎内視鏡(UBE)手術をライブで講演している。写真=ヒュ病院

その際、パク院長が特に強調することがある。「UBEが上手な医師とは、UBEを数多く行う医師というより、UBEが必要な患者と、まだ手術を受けなくてもよい患者を適切に見分けられる医師です」という。患者選択(patient selection)がそれほど重要だという意味だ。

手術手技の進歩に伴い、UBEで治療できる範囲も急速に広がっている。しかし、手術の要否を判断する際、パク院長がMRIとともにまず確認するのは3つだ。

脚の力が落ちているか、歩く能力がどの程度低下しているか、そして患者の症状とMRI上の病変が実際に一致しているか。

第一に、MRIより先に確認するのは「脚の力」

腰に生じる「腰部脊柱管狭窄症」(lumbar spinal stenosis)は、神経が通る脊柱管が狭くなり、脚のしびれや痛み、長時間歩くことの困難を引き起こす変性脊椎疾患だ。主に中高年に多くみられる。

このとき、パク院長が最初に確認するのは「筋力低下」だ。脚の力が低下し続けているか、足首や足の指をしっかり持ち上げられないなど、神経機能が急速に悪化していないかをみる。

痛みが強いことと、神経機能が低下することは同じではない。そのため、痛みがあっても薬や注射、運動・リハビリテーションでコントロールでき、筋力が保たれているなら、手術よりも保存療法で様子をみることができる。

一方、痛みがそれほど強くなくても脚の力が低下し続けている場合は、話が変わる。

パク院長は「進行する筋力低下があるにもかかわらず、無条件に保存療法を続けるのは適切ではありません」とし、「神経機能が悪化しているサインがないかを、必ず最初に確認する必要があります」と話す。

第二に、どのくらい歩けるか

脊柱管狭窄症の代表的な症状の一つは、歩いていると脚がしびれて痛み、これ以上歩けなくなることだ。そのため、歩行能力も手術を判断する重要な基準となる。

このとき、何メートル歩けるかという絶対的な数字より、以前と比べてどの程度悪化したかが重要だ。以前は30分以上、問題なく歩けていた人が、今では5分、10分歩いただけで脚が痛み、休まなければならないなら意味合いが違う。買い物や外出、通勤・通学といった普通の日常生活が難しくなったかどうかも重要となる。

一方、MRIでは狭窄がかなり重症に見えても、歩行に大きな問題がなく日常生活を送ることができ、保存療法で症状を抑えられるなら、手術を急がないこともある。MRI上の「狭窄の程度」と、患者が実際の生活で感じる不便さは、必ずしも比例しないということだ。

腰椎椎間板ヘルニアでも原則は同じだ。腰椎椎間板ヘルニア(lumbar disc herniation)は、椎間板の一部が押し出されて神経を圧迫し、腰だけでなく、お尻や太もも、ふくらはぎ、足に痛みやしびれを引き起こす。脊柱管狭窄症よりはるかに若い年齢、場合によっては20代後半から30代にかけて発症し始める

ただし、筋力低下がなく、痛みをコントロールできる、または時間の経過とともに改善しているなら、まずは保存療法を行う。突出した椎間板が時間とともに自然に小さくなる「椎間板自然吸収(disc resorption)」が起こることもあるためだ。

一方、足首や足の指の力が落ちたり、脚を引きずり始めたりした場合は、手術を積極的に検討する。さまざまな保存療法を行っても痛みが治まらず、眠ることや歩くこと、仕事さえ難しい状態でも同様だ。

第三に、症状とMRIは本当に一致しているか

もう一つ重要な判断基準は、患者が訴える症状と、MRIで確認できる病変が一致しているかを確かめることだ。

脊柱管狭窄症の患者のMRIを見ると、2~3か所が同時に狭くなっているケースも少なくない。例えば、L3-4、L4-5、L5-S1の3椎間がすべて狭く見えるとする。そうなると、3か所すべてを広げたほうが将来的によいようにも思える。

しかし、必ずしもそうとは限らない。パク院長は「患者のどちらの脚がしびれて痛むのか、どの程度歩くと症状が出るのか、筋力低下や感覚異常がどの神経と関係しているのかを、まず確認します」と話す。

そのうえで、MRIと一つずつ照合し、実際に症状を引き起こしている病変がどの椎間にあるのかを正確に突き止める。「MRIで複数の場所が狭く見えても、実際の症状を説明できる病変が1か所なら、残りまで予防的にすべて手術することはありません」と説明する。

症状とMRIが明確に一致しない場合は、選択的神経根ブロックや筋電図検査、神経伝導検査などを補助的に用い、発症原因を絞り込むこともある。 探偵が事件の手がかりを追うのに似ている。

結局、脊椎手術の出発点は、最新の手術手技を選ぶことよりも前にある。脚の力が低下しているか。歩く能力はどの程度悪化しているか。そして、その症状を説明する病変がMRIで正確に確認できるか。

医師だけでなく、患者の立場でも手術を勧められたなら、この3点をまず確認する必要がある。

[FAQ]脊椎疾患の患者からよくある質問

MRIで 脊柱管狭窄症や 椎間板ヘルニアが あると 言われましたが…それなら いつ 手術を 受けるべきですか?

 MRIの情報だけで手術の要否を決めることはありません。脚の筋力低下があるか、歩行や日常生活にどの程度支障が生じているか、実際の症状とMRI上の病変が一致しているかを併せて確認したうえで判断します。

痛みが 強いのですが、 もう 手術を 受けるべき 時期ですか?

必ずしもそうではありません。痛みが薬や注射、運動・リハビリテーションでコントロールでき、神経機能が保たれているなら、もう少し待ってもよいでしょう。一方、痛みがそれほど強くなくても筋力低下が進行しているなら、手術をより積極的に検討すべき時期です。

脊椎の骨が 複数の場所で 狭くなっていると 言われました。 それなら 手術の 規模が 大きくなるのですか?

重要な情報ではあります。しかし、体の症状を実際に引き起こしている椎間がどこなのかを、まず突き止めなければなりません。複数の場所が狭く見えても、症状を引き起こしているのは1か所だけと判断されれば、必要な部位だけを治療する場合があります。

このような 場合は すぐに 病院を 受診すべきだという 最初の 危険な サインは 何ですか?

脚の力が突然落ちたり、急速に悪化したりした場合、排尿・排便機能に異常が生じた場合、会陰部の感覚が低下した場合は、急いで受診する必要があります。このような馬尾症候群(cauda equina syndrome)は、単なる「痛みの強い腰椎椎間板ヘルニア」ではなく、複数の末梢神経根が一度に圧迫される神経学的緊急事態です。治療が遅れると神経損傷が回復しない可能性があり、脚の麻痺から性機能障害、排尿・排便機能障害まで、思いのほか大きな後遺症を残すことがあります。

監修=釜山ヒュ病院パク・マンギュ院長(国際脊椎内視鏡教育センター長)。慶北大学医学部を卒業後、慶北大学病院の脳神経外科で研修し、臨床講師を務めた。脊椎内視鏡、特に両側脊椎内視鏡(UBE)手術を得意とし、複数の国際学会で講演や手術の実演を行ってきた。2025年、世界的な出版社「シュプリンガー」(Springer)が刊行した教科書 〈両側脊椎内視鏡手術〉(Unilateral Biportal Endoscopic Spine Surgery: Basic and Advanced Technique)に章の執筆者として参加するなど、脊椎関連の教科書5冊で計11章を執筆した。世界脳神経外科学会の学術誌(World Neurosurgery)とSCI級の国際学術誌〈ニューロスパイン〉(Neurospine)の論文査読委員も務めている。

パク・マンギュ院長(国際脊椎内視鏡教育センター長)。写真=ヒュ病院
パク・マンギュ院長(国際脊椎内視鏡教育センター長)。写真=ヒュ病院

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