
多くのスポーツ選手にとって、40歳は引退を意識し始める節目です。ところが、42歳になってもマウンドに立ち、時速150kmに迫る球を投げ込むプロ野球投手がいます。
SSGランダースのノ・ギョンウンは1984年3月11日生まれで、KBOリーグの現役投手では最年長です。2024年に38ホールド、2025年に35ホールドを記録し、2年連続でホールド王に輝きました。今年3月には、13年ぶりにワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の韓国代表としてもプレーしました。
特筆すべきは球速です。ノ・ギョンウンは2025年の試合で時速150kmを記録し、最近も150kmに近い速球を投げています。24日のNCダイノス戦では、2007年生まれのコ・ジュンフィを三振に仕留める場面もありました。40代でも競争力を保つ背景には、長年の食事管理と継続的なトレーニングがあります。
肉・魚を断ち、卵・牛乳は摂る「ラクト・オボ」
ノ・ギョンウンの自己管理を語るうえで欠かせないのが、菜食に取り組んだ経験です。本人は2020年のインタビューで、菜食を始めてから体が軽くなり、体力管理にも役立っているように感じると話しました。
当時選んだのが「ラクト・オボ・ベジタリアン(lacto-ovo vegetarian)」です。名称は耳慣れないかもしれませんが、考え方はシンプルです。「ラクト(lacto)」は牛乳や乳製品、「オボ(ovo)」は卵を意味します。
牛・豚・鶏などの肉類や、魚・海産物は口にしない一方で、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品と卵は摂取します。豆腐や大豆、穀類、野菜、果物、ナッツ類などの植物性食品も主な食材です。卵と乳製品を含むすべての動物性食品を口にしないヴィーガンより、食べられる食品の幅が広いのが特徴です。
運動量が多い人にとっては、こうした違いが重要になる場合があります。卵や乳製品を摂ることで、たんぱく質やカルシウム、ビタミンB12などを取り入れやすくなります。ただし、ラクト・オボの食事だけで自動的に栄養バランスが整うわけではありません。摂取量が不足すれば必要なエネルギーを満たしにくく、たんぱく質や鉄分、ビタミンDといった栄養素も不足する可能性があります。
栄養バランスを考慮して組み立てた菜食であれば、運動選手に必要な栄養素も十分に供給できます。これまでの研究をみる限り、菜食が一般的な食事より運動能力を特別に高める、あるいは逆に低下させると断定するのは難しいとされています。
結局のところ、菜食かどうかよりも、自身の運動量に見合ったエネルギーとたんぱく質を十分に摂り、さまざまな栄養素を偏りなく確保することが重要です。
ノ・ギョンウンも、ラクト・オボの菜食だけにこだわってきたわけではありません。その後は肉も再び食べるようになり、試合日程や体調に応じて菜食と肉食を調整してきました。現在のパフォーマンスを、過去のラクト・オボ食だけの効果で説明しにくい理由です。
投げた日は20〜30分の有酸素…早朝まで続けてきたトレーニング
もう一つ目を引くのが、長年積み重ねてきた運動習慣です。
ノ・ギョンウンは登板した日は試合後、20〜30分間走ったり自転車に乗ったりして体をほぐします。登板しない日は、無理に運動量を増やさず休んで回復の時間を取ります。週に2回ほどウエイトトレーニングも行います。
遠征を終えて帰りが遅くなっても、決めた運動を簡単には休みません。釜山(プサン)や光州(クァンジュ)への遠征後、仁川(インチョン)に午前2〜3時に到着しても、翌日が休日ならウエイトトレーニングをすると明かしたことがあります。2024年にも、遠征から早朝に戻った後に運動を済ませて帰宅するほど、一定のトレーニング習慣を重視していると強調しました。
とはいえ、ただ闇雲に運動量を増やすわけではありません。登板の有無や連投回数、次の試合日程に応じて、有酸素運動と上半身・下半身トレーニングの強度を調整します。投げない日は、完全に休むこともあります。40代の投手にとっては、練習と同じくらい回復が重要だからです。
速球は、腕力が強いだけで投げられるものでもありません。投球では、脚で生み出した力が骨盤と体幹を経て、肩と腕へと伝わります。成人の野球投手を対象にした17本の研究を統合した分析でも、臀部周辺の筋力や骨盤・体幹の動きなど下半身機能が投球速度と関連することが示されました。特に、臀部の筋力が強い投手ほど球が速い傾向が、比較的一貫して観察されました。
ノ・ギョンウンが42歳でも150kmに近い球を投げる理由を、特定の食べ物や運動の一つに求めるのは難しいでしょう。かつてラクト・オボの菜食を試し、自分に合う食事法を探りました。その後は肉食も併用しました。さらに、登板後の有酸素運動とウエイトトレーニング、休養を日程に合わせて調整する習慣を、長年にわたり続けてきました。
ノ・ギョンウンは現在、ソン・ジヌが打ち立てたKBO歴代最高齢登板記録の「43歳7カ月7日」に挑んでいます。
