
既存治療後も病勢が進行したり、がんが脳へ転移したROS1陽性肺がん患者に向けた新たな経口治療薬が登場しました。グローバルヘルスケア企業のGSKが米バイオ企業ニューベイラント(Nuvalent)を買収して確保した肺がん新薬「ジデトロ」が、米食品医薬品局(FDA)の承認を取得しました。
GSKは22日(現地時間)、FDAが「ジデトロ」(一般名:ジデサムチニブ)を、これまでにROS1キナーゼ阻害薬で治療を受けた局所進行性または転移性のROS1陽性非小細胞肺がん成人患者の治療薬として承認したと発表しました。GSKが肺がん治療薬でFDA承認を得たのは今回が初めてです。当初の審査期限は9月18日でしたが、約2カ月前倒しで承認に至りました。
ROS1陽性肺がんは、がん細胞の増殖と拡散を促すROS1遺伝子異常が確認される非小細胞肺がんの一種です。ジデトロは、変異したROS1タンパク質の働きを選択的に遮断する経口の分子標的薬で、既存治療の過程で生じた耐性変異に対応し、薬剤が脳まで到達するよう設計されました。ROS1と構造が似たトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)への不要な作用を抑え、神経系の副作用リスクを低減する点も特徴です。
承認の根拠となった単群の臨床第1・2相「ARROS-1試験」では、これまでにROS1標的治療薬を使用した患者117人のうち44%で、腫瘍が縮小または消失する客観的奏効が確認されました。治療に反応した患者の82%は6カ月、69%は12カ月時点でも効果が維持されました。測定可能な脳転移があった患者でも腫瘍反応が認められ、脳転移が多いROS1陽性肺がん患者に追加の治療選択肢となる可能性を示しました。
今回の承認は、GSKが今月15日にニューベイラントの買収を完了してから1週間で出ました。買収額は株式価値ベースで106億ドルで、約15兆7000億ウォン規模です。GSKは今回の取引により、ジデトロに加え、ALK陽性非小細胞肺がん治療薬候補「ネラダルキブ」と、HER2変異肺がん候補物質「NVL-330」も確保しました。
ジデトロが大型品目へ成長するには、治療対象を広げる後続開発が必要です。現時点の承認は、既存のROS1阻害薬による治療歴がある患者に使用が限定されています。GSKは今後、初回治療から使用できるよう、一次治療の適応拡大を進める計画です。
現在、ROS1陽性肺がん治療市場には、ファイザーの「ザーコリ」(一般名:クリゾチニブ)、ロシュの「ロズリトレク」(一般名:エヌトレクチニブ)、BMSの「オーグティロ」(一般名:レポトレクチニブ)などが定着しています。ジデトロの参入により、有効性と安全性、脳転移に対する治療効果をめぐる競争も一段と激しくなる見通しです。
