AI生成の顔、人間より「信頼できそう」に見える理由

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実写と生成画像の判別正答率は58.4%止まり…金融詐欺・ロマンス詐欺への悪用に懸念

「野球場の女神」として口コミで広まり話題になった動画の女性は、実在の人物ではなくAI生成画像だった。写真=Redditコミュニティのキャプチャ
「野球場の女神」として口コミで広まり話題になった動画の女性は、実在の人物ではなくAI生成画像だった。写真=Redditコミュニティのキャプチャ

最近、ソーシャルネットワーク(SNS)で、プロ野球の球場の観客席に座って試合を見つめる女性の短い動画が再生回数800万回を超え、話題になりました。「野球場の女神」として拡散したこの動画の女性は、AIが作り出した仮想人物でした。実在の人物だと思い込んで動画を見た人たちからは、驚きの声が上がりました。 

AI生成画像は、現実と見分けがつかないほど精巧さを増しています。広告やグラビアにAIモデルが起用され、映画にAI俳優が登場する例も出てきました。 

では、私たちはAIが作った顔を実物と正確に見分けられるのでしょうか。さらに、AIで生成された顔を実在の人間よりも「信頼できそうだ」と感じる可能性はあるのでしょうか。 

この点を検証するため、英国と米国の心理学研究チームは、AIが生成した顔と実在する人物の顔を参加者に提示し、リアルさと信頼度を比較しました。研究結果は、国際学術誌〈ジャーナル・オブ・ビジョン(Journal of Vision)〉に掲載されました。

研究チームは、実在の人物の顔32枚とAIで作った顔64枚の計96枚の顔写真を用意しました。画像は、人種、性別、年齢のバランスをできる限り整え、特定集団の特性が研究結果に影響しないようにしました。AIで作った顔64枚のうち半分は、以前、顔生成AIの標準として使われていた人工知能モデルGANで作成し、残り半分は、利用者が入力した文章を基に人の顔や絵を生成する最新の画像生成技術である拡散モデルDMで作成しました。 

これらの写真は、研究参加者169人に無作為に提示されました。参加者には、写真が本物か仮想画像かを判別するよう求めました。その結果、平均正答率は58.4%でした。実在の人物の顔とAI生成画像を十分に見分けられていない実態が浮かびました。

さらに、仮想の顔をより信頼する傾向も確認されました。研究チームは別の参加者に同じ顔写真を見せ、1点(まったく信頼しない)から7点(非常に信頼する)までで信頼度を評価するよう求めました。その結果、実在の人物の顔の平均点は4.03点で最も低くなりました。一方、GANの顔は4.36点、DMが作った顔は4.70点で、最も高い信頼度を記録しました。

AI生成画像は、時間の経過とともに現実と見分けがつかないほど、より写実的に進化しています。写真=ゲッティイメージズバンク
AI生成画像は、時間の経過とともに現実と見分けがつかないほど、より写実的に進化しています。写真=ゲッティイメージズバンク

既存研究では、人は顔を見てから約0.1秒で、相手をどれほど信頼できるか、どれほど好感が持てるかといった第一印象を、ほぼ無意識に形成するとされています。有能さや支配性といった特性に関する判断も、非常に短い時間で行われ得るとする報告があります。

では、なぜAIの顔のほうが高い信頼度を得たのでしょうか。

今回の研究では、直接の要因は特定できませんでした。研究チームは「ただ、既存の顔認知研究では、左右対称性が高く平均的な顔ほど信頼感のある印象を与えるという結果が報告されている」としたうえで、「今後、AIの顔のどの特性が信頼度を高めたのかについて追加研究が必要だ」と説明しました。 

研究チームはさらに、「画像の現実味と信頼度を判断する過程は、互いに異なる心理メカニズムによって作動する可能性がある」と付け加えました。つまり、「どの顔が実在の人間のように見えるか」と「その顔がどれほど信頼できそうか」を判断する基準は、同じではない可能性があるということです。 

実際、今回の研究で参加者は、最新AIモデル(DM)が作った顔を、従来AIモデル(GAN)で生成した顔より現実的だとは評価しなかったにもかかわらず、DMで生成した画像を最も信頼できそうな顔だと評価しました。

研究チームは「AIが生成した顔画像は、政治的な偽情報の拡散や身元のなりすまし、金融詐欺、ロマンス詐欺などに悪用され得る」と指摘し、「生成AIの拡散に伴うリスクを理解し、対応戦略を整えることが重要だ」と強調しました。

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