
高血圧は、世界保健機関(WHO)が指摘する世界の死亡リスク要因の第1位だ。毎年約 1,080万人以上を早期死亡に関わる「沈黙の殺人者」。
日本でも、主要な死亡原因の上位に常に挙げられる。健康保険審査評価院によると、2019年から2023年までの5年間で高血圧患者数は合計 14.1% 増加した。毎年3.4%ずつ増えている計算だ。そこで5月17日の「世界高血圧デー」を前に、高血圧をめぐる誤解や偏見について確認しておこう。
症状がなければ治療しなくてもよい?
実際、高血圧の多くは特別な症状がない。そのため治療をしなかったり、薬を自己判断で中断したりするケースも少なくない。 しかし本当に怖いのは合併症だ。生命に直結する心臓や腎臓の合併症、冠動脈疾患や脳卒中の原因になり得る。高血圧で医療機関を受診する患者の約 73%が合併症に悩まされている。 重い合併症を未然に防ぐためにも、血圧は継続して管理する必要がある。
薬を飲んで血圧が正常に戻ったら、薬は飲まなくてもよい?
高血圧は一度発症すると、生涯にわたり治療と血圧管理に注意を払う必要がある。多くの病気は薬で治れば中止できるため、高血圧でも同じだと考えがちだ。実際、薬を飲まなくても一定期間は正常血圧を保てる人もいる。 しかし多くの場合、数カ月以内に血圧が再び上がり、医療機関を受診することになる。
低血圧のほうが高血圧より危険?
低血圧も高血圧と同様に注意は必要だ。 ただし、突然の出血で大量に失血するなどの状況でない限り、生命を脅かすほど危険な病気とまでは言いにくい。 実際、高血圧と比べると低血圧の死亡率はそれほど高くない。 めまいがする、顔色が青白い、 だるさがあるなどのときに血圧が少し低いと「低血圧だ」と思いがちだが、多くはストレスや過労が原因だ。結局、この程度の低血圧は大半が大きな問題にならない。
若いときの高血圧は無視してよい?
統計的には、高血圧は高齢層でより多くみられる。だが高血圧が危険な理由は合併症であり、高血圧の合併症は年齢に関係なく起こり得る。特に近年は、肥満の若年層でも高血圧が急速に増える傾向にある。家族歴がある場合や、肥満ではないのに血圧だけが高い若者も少なくない。
高血圧患者は 140/90mmHg を超えてはいけない?
高血圧患者の一般的な管理目標は、収縮期140mmHg未満、拡張期90mmHg未満だ。これを超えると高血圧治療が必要とされるためである。だが、これはあくまで最低限の目標値であり、正常範囲を外れても他のリスクが高まらない限り、過度に深刻に心配する必要はない。 ただし血圧の変動が大きい場合は、必ず医療機関を受診して自身の状態を確認する必要がある。
高血圧は男性の病気?
高血圧は女性より男性に多い。 だからといって、女性が高血圧リスクから安全という意味ではない。 男性に比べて相対的に少ないだけだ。
むしろ女性は男性より心臓が小さく、心拍数が速い傾向があり、月経周期、 避妊や妊娠・出産、 閉経に至るまでホルモンの影響を受けやすい。したがって、経口避妊薬、 妊娠に伴う高血圧、 更年期以降の健康状態の悪化などにより、高血圧を発症する可能性が高まる。女性の飲酒・喫煙者の割合が増えることで、生活習慣の変化による高血圧の発症も増えている。特に60代以降では、高血圧の有病率に男女差がない、あるいは女性のほうがやや高いとする研究結果もある。
さらに女性では、普段の血圧は正常でも、医師の前や診察室で測ったときだけ血圧が高く出る「白衣高血圧」のケースも多い。
監修=蔚山エリヤ病院 高血圧・糖尿病センター チョ・ジョンデ 医務院長(内科)。
