
ミラノ・コルティナ冬季オリンピック大会が来月6日に幕を開ける。8つの種目と16の細分野で合計116個の金メダルをかけて選手たちが技量を競う。我が国は伝統的に強さを見せているショートトラックなどでメダルを狙っている。
ショートトラック競技では特に緊迫感あふれる場面が続出する。コーナリングの過程でバランスを失った選手がトラック外の壁面にぶつかる状況がしばしば発生する。試合中ずっと目を画面から離せないショートトラック。他の種目に移る前にこんな疑問を抱いた方もいるだろう。「しかし、なぜショートトラックをはじめとする氷上競技では選手たちが反時計回りに回るのか?」
陸上トラックでも選手たちはトラックのコーナーを左に回りながら走る。陸上と氷上だけではない。野球でも打者がベースを反時計回りに回る。
「人は本能的に地球の自転方向に従う」
その理由についていくつかの説明が出てきた。地球自転説、心臓位置説、右利き説などである。地球自転説は北極上から見下ろすと地球が反時計回りに自転しているため、人も地球のように反時計回りに回るというものである。心臓位置説は心臓が左に偏っているため、左に重心を置いてトラックのコーナーを回る方がバランスを取りやすいと主張する。右利き説は右利きの人はコーナーを左に回る方法に慣れていると説明する。
この中で地球自転説は最も簡単に反論可能である。万物の霊長類と自負する人間だが、地球の自転を感じる人はいない。感じなくても本能で知ることができると言われているが、意識しなくても自転方向を本能的に知っているなら、自然の中で方向を失う状況は発生しないだろう。また、地球が反時計回りに回るという観察は北極上の観察者の視点を前提としている。南極上から見れば地球は時計回りに自転する。
「心臓が左にあるので、左に回る方が楽だ」
心臓位置説はトラックを右に回ると体のバランスが崩れやすいと説明する。それなりに聞こえる。しかし、少し考えてみよう。「左に偏った心臓のせいで人体の重心が左に傾く」という説明を聞いたことがあるだろうか?ないだろう。心臓は左にあるが、肝臓は右にある。心臓は成人基準で重さが約300gで、肝臓は1.4〜1.7㎏である。心臓が左に少し移動した重心を肝臓が正すと考えられる。
残る仮説は右利き説である。世界の人口の約90%が右利きであり、この割合は選手たちでも同様に現れる。右利きの人は右足を使う方が楽である。氷上でコーナーを左に回ると右足を外側に置き、氷を蹴りながら推進力を得やすい。右腕を振る動作もより自然で力強く行える。陸上競技でも同じ原理で右利きの選手は反時計回りをより楽に感じる。
「右利きは右足で蹴る動作に慣れている」
過去のオリンピック競技の開催方式の変化が右利き説を裏付けている。1896年の第1回オリンピックはアテネで開催された。当時、大会組織委員会は選手たちが時計回りにトラックを走るように陸上競技を運営した。すると選手たちの不満が噴出した。「不自然で不便な方法であり、記録も良く出ない」というものであった。この反応が力を得た。結局、国際陸上連盟は国際公認規則を作り、選手たちがトラックを左に走るようにした。
右利きは左足を補助に、右足を主要動作に使う。これを示す簡単な例がキックボードや地球儀の遊具である。右利きは右足で地面を蹴ったり転がしたりして推進力を得る。陸上トラックを回転する際にも原理は似た動作が行われる。左足は体を支えながら、右足が地面を蹴って体を前に推進する。
ここで追加の疑問が生じる。右利きの左足は体の中心を守る役割をする時間が長い。それなら、右利きは左足が右足よりも筋肉が発達し、重くなるのではないか?実際にそう主張する人がいる。筆者も以前はインボディで筋肉量を測定すると現れる左右の足の不均衡が主に右利きか左利きかによって分かれると推測していた。
よく使う足が強いのか、それとも支える足が丈夫なのか?
右利きの右足を「優勢足」と呼び、左足を「非優勢足」と呼ぶ。果たして右利きの非優勢足に筋肉が多いのだろうか?関連論文(Lower Extremity Muscle Morphology in Young Athletes: An MRI-Based Analysis, Tate et al., 2006)によれば「筋肉によって異なる」が結論である。非優勢足ではある筋肉は大きいが、他の筋肉は小さかった。要するに、右利きの左足の筋肉がより発達しているとは言えない。(この論文の仮説は優勢足がより発達するというものであった。)研究はMRIで参加者の下肢のさまざまな筋肉の筋肉量と断面積、長さを比較する方法で行われた。
この機会に自分の左足と右足の筋肉量をインボディで比較してみよう。優勢足の筋肉量が多いかチェックしてみよう。
トラックを左に回る理由を知ると、冬季オリンピックの氷上競技がより興味深くなるかもしれない。左利きは反時計回りが不利だろうが、そうであれば世界的な氷上選手の中で左利きの割合は低いのだろうか?この問いはいつか次の探求テーマとして残しておく。
