
眼底を撮影した画像から心血管疾患リスクを推定し、脳画像で脳梗塞の部位と大きさを測定する人工知能(AI)医療機器について、複数の病院で有効性の検証が進む見通しです。食品医薬品安全処の承認を得ても、臨床的根拠の確保や健康保険適用が課題となってきた医療AIの病院導入が、今後さらに進むとみられます。
保健福祉部と韓国保健産業振興院は4日、「AI応用製品迅速商用化支援事業(AX-Sprint)」のデジタル医療機器分野に関する着手報告会と協約締結式を開き、運営コンソーシアム6件を最終選定しました。
今回の事業は、製品開発や認可・承認よりも、その後の市場参入プロセスに重点を置きます。企業と医療機関が診療現場で製品を使用してリアルワールドデータを蓄積し、新医療技術評価や保険収載に必要な臨床的根拠を整えられるよう支援します。病院導入と使用拡大に向け、学会・展示会と連動した広報やマーケティングも後押しします。
承認後に求められる「実患者に基づく根拠」
医療AIは、食品医薬品安全処の承認を得たからといって、直ちに病院で広く使われるわけではありません。実際の患者に使用した場合の安全性と有効性、既存診療にどのように寄与するかなどを追加で立証する必要があります。
とりわけ健康保険の診療報酬点数がなければ、病院や患者が費用を負担しなければならず、利用拡大も難しくなります。多施設臨床やリアルワールドデータの確保、新医療技術評価・保険収載の準備にも相当の費用と時間がかかります。個別企業が単独で負担しにくい、市場参入の障壁です。
支援対象は、食品医薬品安全処の製造業許可を受けた医療機器企業と、認可・承認を終えて市場参入を準備するAI製品です。新医療技術評価の猶予や革新医療技術、即時参入制度など、正式評価前でも一定条件の下で診療現場で使用できる先行導入制度の指定製品も含まれます。
事業期間は2026年から2027年までの2年間です。公募要項上の政府支援金はコンソーシアム当たり最大で総額19億ウォン前後で、最終支援額は課題ごとに異なります。主幹企業は医療機関2カ所以上とコンソーシアムを組成しました。
閉塞した脳血管から胃内視鏡の病変まで
脳疾患分野では、ジェイエルケイとヒュロンのコンソーシアムが選定されました。
ジェイエルケイは、ハルリム大学聖心病院や盆唐ソウル大学病院など22の医療機関に、脳卒中解析AIを導入します。急性虚血性脳卒中は、脳血管が詰まり、脳組織に血液が十分に供給されなくなる疾患です。どの治療をどれだけ早く実施するかが、患者の予後を左右します。
ジェイエルケイの製品は、コンピュータ断層撮影(CT)と磁気共鳴画像(MR)を解析し、脳血流の状態を示す指標を自動算出します。拡散強調画像(DWI)では急性脳梗塞の部位を特定して大きさを数値化し、病変のパターンを解析して脳卒中の原因タイプを判断するために必要な情報を提供します。
コンソーシアムは、AI導入が患者の予後と診療費にどのような変化をもたらすかを検証します。
ヒュロンは、新村セブランス病院など3つの医療機関で、パーキンソン病の診断補助AI「Heuron IPD」を検証します。この製品は脳の磁気共鳴画像を自動解析し、ナイグロソームの変性の有無を判定します。
ナイグロソームは、運動調節に関与する中脳黒質内の構造です。この部位の変性の有無は、パーキンソニズムを判断する画像所見の一つです。コンソーシアムは、AIが診断精度を高め、不必要な陽電子放射断層撮影(PET)検査を減らせるかを検討します。
がん診断分野には、ルニットとプレベノティクスが参加します。
ルニットは、ソウル大学病院と江北サムスン病院、建国大学病院など10の医療機関で、胸部X線とマンモグラフィ解析AIを使用します。約25万件のリアルワールドデータを蓄積し、健康保険の診療報酬点数体系への参入を推進する計画です。
「Lunit INSIGHT CXR」は、胸部X線で肺結節や気胸など10種類の異常所見の位置を表示し、病変がある可能性をスコアで示します。「Lunit INSIGHT MMG」は、マンモグラフィで乳がんが疑われる部位を検出し、がんである可能性を数値で提示して医療者の読影を支援します。
プレベノティクスは、ソウル大学病院とセブランス病院など7つの医療機関の消化器内科に、胃内視鏡AI「Prevenotics-G Pro」を導入します。この製品は、内視鏡機器から入力される映像をリアルタイムで解析し、病変の位置とタイプを画面に表示します。内視鏡システムと医療画像保存通信システム(PACS)に連動し、医療者が別途操作しなくても検査中に自動で作動します。
コンソーシアムは、胃がんへ進行し得る前駆病変をより正確に見つけ出し、不必要な生検を減らせるかを検証します。

生体信号と網膜血管からリスクサインを捉える
心血管分野では、シナジーエイアイとメディウェイルのコンソーシアムが選定されました。
シナジーエイアイは、ソウル聖母病院と高麗大学九老病院など15の大学病院の循環器内科などに、生体信号解析AI「SYNERGY Mac’AI」を導入します。この製品は患者の生体信号を解析し、医療者の介入が必要となり得る重要な不整脈の発生リスクを表示します。
医療者はこれを基に、リスクの高い患者を優先的に抽出し、追加検査や集中的な観察が必要かどうかを判断できます。コンソーシアムは複数の病院で実患者に製品を使用し、不整脈リスク予測の有効性を確認します。
メディウェイルは、新村セブランス病院と漢陽大学九里病院など4つの医療機関で「DrNoon for CVD」を検証します。眼底カメラで撮影した眼底画像をAIが解析し、心血管疾患の発症リスクを評価する製品です。
眼底画像には網膜の微小血管が描出されます。コンソーシアムはこれを活用し、慢性疾患患者や手術を控えた患者の心血管リスクを評価できるかを検討します。安全性と有効性を立証し、関連する健康保険の診療報酬点数の収載も推進します。
今回選定された製品は、疾患を自ら確定診断したり治療方針を決定したりするシステムではありません。画像と生体信号を解析した結果を提示し、医療者の判断を支援する診断・予測補助ツールです。
保健福祉部と韓国保健産業振興院は、臨床実証と制度参入に必要な費用を支援し、今回の事業で蓄積したデータと市場参入の経験が医療AI産業全体へ波及するよう取り組む方針です。
