骨粗しょう症ではないのに骨が「ポキッ」…骨密度だけでは見落とす骨折リスク

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55歳以上の骨粗しょう症性骨折患者の17%が2年以内に再骨折…身長低下・家族歴も危険サイン

女性が路上で転倒し、地面に横たわったまま右膝を押さえて痛がっている。左手のそばには杖が落ちている。写真=ゲッティイメージバンク

「滑って手首を骨折しました」「転んで股関節を骨折し、手術まで受けました」。

多くの人は、運が悪かった転倒事故として片づけがちです。ですが中年以降は、「なぜ転んだのか」と同じくらい、「なぜその程度の衝撃で骨折したのか」を確かめる必要があります。骨がすでに弱っていて、軽い衝撃に耐えられなかった可能性があるためです。

仁川ナヌリ病院の関節センター長、コ・ヨンワン氏は「患者さんは骨折で受診しますが、実際に治療すべき病気は骨折の背後に隠れている骨粗しょう症です」と指摘し、「骨折は骨粗しょう症が送る最後のサインであることが多い」と話しています。

骨も毎日すり減って建て直す…年齢とともにバランスが崩れる

骨は、一度つくられたらそのまま残り続ける組織ではありません。

体内では、古い骨を壊す「破骨細胞」と新しい骨をつくる「骨芽細胞」が絶えず働いています。若い時期は、失われる量と新たに補われる量が概ね均衡します。ところが年齢を重ねると、新しくつくられる量より失われる量が多くなりやすいのです。特に女性は閉経後、女性ホルモンが急激に減ることで骨の喪失が速まることがあります。

コ氏は「外見は立派な建物でも内部の鉄筋が腐食すれば小さな衝撃で崩れるように、骨粗しょう症も見た目には異常がなくても骨の内部はすでに弱っている状態です」と説明しました。

骨粗しょう症は、骨が弱くなる過程で目立ったサインが出にくい病気です。腰が少し曲がったり身長が縮んだりしても、加齢のせいだと受け止めてしまいがちです。ところが尻もちをついたり、転んで手をついただけなのに脊椎や手首、股関節を骨折し、そこで初めて隠れていた病気に気づくケースが少なくありません。

「骨粗しょう症ではないはず?」…骨密度がすべてではない

ここには意外な落とし穴があります。骨密度のTスコアが骨粗しょう症の診断基準に達していなくても、骨折は起こり得ます。

閉経後女性と50歳以上の男性では、骨密度を若年成人の平均と比べた「Tスコア」を主に用います。Tスコアが-2.5以下なら骨粗しょう症、-1.0より低く-2.5より高ければ骨減少症に分類します。骨減少症は正常より骨密度が低いものの、骨密度の数値だけで見れば骨粗しょう症には至っていない状態です。

ただし、この数値だけでは骨の強さをすべて示せません。年齢や過去の骨折、骨の微細構造、転倒しやすさなども実際の骨折リスクを左右します。同じ骨密度でも、50代と80代で骨折リスクが同じではない理由です。すでに軽い衝撃で骨折した経験があるなら、骨密度の数値だけを見てリスクが低いと判断してはいけません。

骨減少症の段階で骨折する人も少なくありません。骨減少症に該当する人口そのものが、骨粗しょう症の患者より多いためです。結局、「骨粗しょう症の数値ではないから大丈夫」と安心するより、年齢や過去の骨折、家族歴、服用薬をあわせて確認する必要があります。

コ氏は、以前より身長が2〜3cm以上縮んだ、あるいは小さな衝撃でも骨折したことがある場合は、骨の状態を確認する必要があると助言します。親に股関節骨折の既往がある人や、ステロイド薬を長期間服用している人も注意が必要です。

身長が縮むことを単なる加齢とだけ捉えるのも問題です。骨が弱くなって脊椎が押しつぶされる「脊椎圧迫骨折」が起きると、身長が低くなり背中が丸くなることがあります。痛みが強くないため、骨折に気づかずに過ごす人もいます。

骨粗しょう症の初期は、一般的なX線だけでは見抜きにくいことがあります。最も広く用いられている検査が「DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)」の骨密度検査です。異なるエネルギーのX線を用い、主に腰椎と股関節の骨密度を測定します。

コ氏は「高層ビルも外観だけでは内部の鉄筋がどれほど頑丈か分からないのと同じで、骨密度検査は骨の中がどれほど硬いかを確認する検査です」と説明しました。

必要に応じて血液検査も行います。カルシウムやビタミンDが不足していないか、別の病気が原因で骨が弱くなっていないかを確認します。血液や尿で「骨代謝マーカー」を測定することもあります。骨がつくられ、失われる速度を推定し、治療経過の評価に活用します。

検査を受けるべきタイミングは人によって異なります。高齢の人や軽い衝撃で骨折した経験がある人、低体重の人、親が股関節骨折を経験した人、ステロイドを長期服用している人であれば、より早い段階で検査を検討できます。

現在、国の健康診断では54歳・60歳・66歳の女性に骨密度検査を提供しています。ただし該当年齢でなくても、骨折の危険因子があれば診療を通じて検査の必要性を検討できます。

一度骨折したら安心は禁物…2年以内に17%が再骨折

骨折部位が治っても、リスクまで消えるわけではありません。

2025年に国際学術誌 《Bone》 に掲載された研究で、釜山大学・慶熙大学の研究チームなどは健康保険審査評価院のデータを用い、2013年に骨粗しょう症性骨折を経験した55歳以上の患者を分析しました。研究では、直前1年間に同種の骨折がなかった患者を対象に、その後の再骨折の有無を調べました。

約17%が2年以内に再び骨折しました。1回の再骨折を経験した人のうち、約28%はその後2年以内に再度骨折しました。骨折を繰り返すほど、近い時期に追加の骨折が起きるリスクが高まる可能性を示します。

骨折部位だけを治療して終えると、次の骨折リスクを高めた要因がそのまま残り得ます。骨粗しょう症の有無を確認して必要な治療を受け、筋力とバランス感覚を高めて転倒そのものを減らす管理が必要です。

実際には、骨折後も治療薬の処方につながらない患者のほうが多くいました。

2025年に 《Journal of Bone Metabolism》 に掲載された韓国の健康保険データ分析によると、骨折後1年以内に骨粗しょう症治療薬を処方された患者の割合は、2006年の31.1%から2021年には39.9%へ上昇しました。ただ、2021年でも骨折患者10人のうち約6人は、1年以内に骨粗しょう症治療薬の処方を受けていませんでした。

特に警戒すべき部位は股関節です。大腿骨と骨盤が接する部位で、ここを骨折すると歩行が難しくなり、手術と長期のリハビリが必要になることが少なくありません。活動量が減ると筋肉も落ち、元の生活に戻るのが容易ではなくなる可能性があります。

今年 《Bone》 に掲載された韓国の研究は、股関節骨折を経験した3万9670人と、骨折のなかった7万3428人を比較しました。研究チームは骨折直後の急性期の影響を減らすため、骨折1年後から長期の死亡リスクを追跡しました。股関節骨折を経験した人の死亡リスクは比較群より高く、70代では期待余命も男性は平均2.94年、女性は2.03年短かったとしています。ただし観察研究であるため、股関節骨折が期待余命の短縮を直接引き起こしたと断定はできず、研究で測定できなかった別の要因の影響が残っている可能性もあります。

自宅で手首を押さえ、痛みを訴えている様子。手首は転倒時に骨折が起こりやすい部位で、中年以降に小さな衝撃でけがをした場合は、骨密度と骨折リスクをあわせて確認する必要がある。写真=ナヌリ病院

骨粗しょう症になる前に薬で防げるのか?

治療開始の時期をさらに前倒しできるかを検討する研究も出ています。骨粗しょう症まで進行してから薬を使うのではなく、その前段階で骨折を減らせるかどうか、という点です。

2025年の 《ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)》 には、50〜60歳の閉経初期の女性1054人を10年間追跡した臨床試験の結果が掲載されました。対象者は若年成人の平均より骨密度が低いものの、Tスコアが-2.5より高く、骨密度の数値上は骨粗しょう症の診断基準に該当しない女性でした。

研究チームは、骨が過度に速く失われるのを抑えるビスホスホネート系の骨粗しょう症治療薬「ゾレドロン酸」を使用しました。静脈内に投与する薬です。

研究開始時と5年後の2回、ゾレドロン酸の投与を受けた女性のうち、10年間で脊椎X線で新たな骨折が確認された割合は6.3%でした。2回とも偽薬を投与したプラセボ群は11.1%でした。研究では、以前のX線と比べて椎体の高さが20%以上低下した場合などを「形態学的椎体骨折」と判定しました。

だからといって、すべての50代女性や骨減少症の患者が、あらかじめ薬を使うべきだという意味ではありません。個々の骨密度や過去の骨折、年齢など全体のリスクを踏まえ、治療の要否を決める必要があります。

薬だけで骨を守れるわけでもありません。十分なたんぱく質とカルシウム・ビタミンDを摂取し、筋力トレーニングを継続すれば、骨と筋肉を同時に守る助けになります。バランス感覚を養う運動は、転倒の可能性を下げることにもつながります。

コ・ヨンワン院長の経歴 写真=ナヌリ病院

コ氏は「骨粗しょう症は骨が弱くなる病気ですが、最終的に私たちが防がなければならないのは骨折です」と述べ、「50歳以降は血圧や血糖を管理するように、骨の健康も定期的に点検する習慣が健康寿命を守る最も効果的な方法です」と強調しました。

中年以降に軽い衝撃で骨折した場合、「運が悪くて転んだだけ」と考えないほうが望ましいでしょう。なぜ転んだのかに加え、なぜ自分の骨がその程度の衝撃に耐えられなかったのかを探る必要があります。

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