24時間明かりの消えない分娩室 地域の妊婦を支える産婦人科専門病院

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[K-ベスト病院]産婦人科分野――水原のセントマリー女性病院

分娩は一刻を争う救急事態が頻繁に起きる、代表的な必須医療の領域です。写真=クリップアートコリア

救急車が出発する直前のことでした。患者の子宮口が急速に開き始めました。早産兆候のあるハイリスクの双胎妊娠の患者を、近隣の大学病院へ搬送しようとしていた、その瞬間でした。妊婦の状態が気がかりで救急車に乗り込もうとしていた病院長の耳に、切迫した声が飛び込んできました。

「院長、いま赤ちゃんの足が見えます!」

搬送を強行することはできませんでした。走行中の救急車内で分娩が進めば、妊婦も赤ちゃんも危険にさらされかねないためです。迷っている時間はありませんでした。

妊婦を分娩室へ急いで移しました。妊娠30週に満たなかった双子は経腟分娩でこの世に生まれ、幸いにも妊婦と2人の赤ちゃんはいずれも無事でした。2016年7月にセントマリー女性病院を開院して間もない頃の出来事でした。 

そして、ちょうど10年が過ぎた今。あの日、医療スタッフの腕の中で産声を上げた双子は、いつの間にか小学生となり、元気に育っています。 

「私たちのような病院は、いつ起きるか分からない救急事態と常に向き合っています。それでも、医療スタッフが力を合わせて一つの命、一つの家庭を守り抜くたびに、やりがいを感じます。この仕事を選んで良かったと思います。」 

キム・ドンジュ院長(セントマリー女性病院)は当時の切迫した状況を振り返り、こう話しました。 

キム・ドンジュ セントマリー女性病院長が24日、コメディドットコムの取材に応じています。写真=ウォン・ジョンヒョク記者

セントマリー女性病院は開院から10年が過ぎた現在まで、こうした救急事態にたびたび直面してきました。そのたびに同院は、地域の二次医療機関として「最前線を担う」という覚悟で患者を受け入れてきました。麻酔科(麻酔疼痛医学科)と産婦人科の専門医が、夜間や休日を問わず24時間、分娩救急患者に備えて待機し、病院の灯をともしてきました。

少子化と必須医療の人材難で地域の分娩インフラが縮小する中、セントマリー女性病院は不妊治療から妊娠、24時間の救急分娩、産後ケアまでを網羅する診療体制を整え、地域の出産安全網としての役割を担っています。盆唐圏の大規模医療機関まで移動しなくても、身近な生活圏で専門的な産科診療を受けられることから、水原や華城、義王など京畿道南部圏の妊婦が足を運んでいます。

同院の専門性と診療力は、政府の専門病院指定によっても公式に認められました。2025年、保健福祉部指定の産婦人科専門病院に選定されました。2025年時点で、全国の福祉部指定の産婦人科専門病院は11施設にとどまります。

グラフィック=ユン・サンソン記者 

麻酔科(麻酔疼痛医学科)専門医が24時間待機する産婦人科 

キム・ドンジュ院長はカトリック大学医学部の産婦人科を卒業後、ソウル聖母病院でレジデントとフェローの課程を修了しました。産婦人科は大きく、分娩を担う産科と、内分泌疾患や婦人科がんなどを扱う婦人科に分かれます。キム院長は産科を専門に研鑽を積み、妊娠・分娩とハイリスク妊娠を中心に診療してきました。

キム院長が産科医の道を選んだ背景には、父の影響が大きかったといいます。

父であるキム・スピョン元カトリック大学医学部名誉教授は、大韓民国の第1世代の産婦人科専門医の一人として知られています。キム院長は、病院で深夜でも救急を知らせる電話が鳴ると、ためらいなく家を出る父の背中を見て育ちました。寝ぼけたまま玄関の扉が開く音を聞いて後を追ったこともあり、大学生になってからは自ら車を運転して父を救急外来へ送り届けたこともありました。 

「子どもの頃は、ただ不思議でした。仕事がそれほど大変だとも知らず、ただ面白そうだと思って付いて行ったこともあります。後になって考えると、父はいつも誰かの出産のために駆けつけていたんです。新しい命が生まれる瞬間を担う仕事は、本当に格好いいと思いました。」 

父は誰よりも患者を最優先する医師でした。息子が医師になると、「患者1人につき朝・昼・夕、そして退勤直前にも必ず状態を確認し、回診も1日に10回は回るべきだ」と助言するほどでした。 

インターンを終えた後、仕事の過酷さに一時は悩んだものの、最終的に父のような医師になると決めました。ただ、大学病院に残り続けるつもりはありませんでした。三次医療機関が適切に機能するには、最前線にいる一次・二次医療機関の役割が重要だと考えたからです。地域の小さな病院へ行き、大学病院では経験できないさまざまな状況に向き合い、体当たりで学ぶことを決意しました。

「水原で最も分娩件数の多い産婦人科で勤務医として働きました。数年働くうちに、西水原という地域や隣接する華城、義王などで、適切な分娩病院や女性病院が見つからず、遠方から移動してくる妊婦を多く目にするようになりました。」 

水原は新婚夫婦や若い世帯が多く暮らす、京畿道南部圏を代表する都市の一つです。しかし少子化が続き、分娩・出産といった必須医療の人材難が深刻化する中、水原を含む周辺地域でも閉院する産婦人科が相次ぎました。産婦人科の運営を続けても、分娩室は閉鎖する例も少なくありませんでした。実際、キム院長が勤務医として2年間働いた盆唐のある産婦人科も、現在はなくなっています。  

こうした状況のため、キム院長が「水原に24時間の救急診療が可能な産婦人科を設立する」と言った際、周囲は皆止めました。「お金も稼ぎにくい上に、体だけがきつくなる」と心配したのです。

それでもキム院長は、こういう時こそ一人ひとりを救うことに全力を尽くしたいと考えました。「目先の利益を追うより、この地域の妊婦と家族にとって不可欠な医療の安全網を築こう」と決意しました。深夜でも救急外来へ駆けつける父の姿を見て育った彼にとって、産婦人科は単なる診療科ではなく、命を守る最前線でした。 

カトリック大学医学部時代に貴重な経験を共にした先輩・後輩の産婦人科専門医と志を一つにし、開院準備を始めました。カトリック大学医学部教授で産婦人科専門医のキム・ギボム、チャン・ドンギュ両教授、麻酔科(麻酔疼痛医学科)専門医でカトリック大学医学部の外来教授であるソン・ホジョン氏と、キム院長を含む計4人の病院長体制で運営する産婦人科専門病院を構想しました。「この4人が結束すれば、どんな命でも救える」と信じていました。 

病院名は、カトリック中央医療院傘下の病院で勤務した経歴を共有する病院長たちの歩みにちなみ、「セントマリー女性病院(St. Mary's Women's Hospital)」としました。

セントマリー女性病院は、水原や華城、義王など京畿道南部圏の妊婦が訪れる、西水原圏の地域拠点となる産婦人科専門病院です。写真=セントマリー女性病院

キム院長は「麻酔科(麻酔疼痛医学科)専門医が病院長として役割を担う産婦人科は、当院が唯一です」と述べました。 

「分娩は、一刻を争う救急事態に対応できる医療スタッフ、麻酔を担える麻酔科専門医、そして24時間365日、救急に備えられる医療スタッフとインフラがすべてそろって初めて成り立つ領域です。1件の分娩のために待機しなければならない人員は相当です。」 

そのため、多くの分娩病院は採算が合わず、次々と閉院しました。それでもキム院長は「妊婦と赤ちゃんの命を救うためには、誰かがやらなければならない」との思いから、24時間の救急診療体制を守り続けています。 

もちろん、二次病院としてハイリスクの救急患者が発生したり、大学病院での治療が必要だと判断したりした場合は、近隣の大学病院へ転院させます。このため、聖ビンセント病院との診療協力協約の締結など、近隣の三次病院とも随時交流しています。 

患者と積極的に向き合う医療スタッフ

セントマリー女性病院では産科を中心に診療しつつ、婦人科・ハイリスク妊娠・不妊・キッズ発達・乳腺甲状腺の計5分野のクリニックも併設して運営しています。とりわけ、診療から回復、産後ケアまでを一カ所で完結できる「ワンストップケア」システムは、妊婦が最も満足するサービスの一つです。産後ケア施設を利用する患者が多く、予約は常に満室です。 

産後ケア施設は医療機関ではなく、近隣生活施設に分類されます。そのため一般の産後ケア施設の中には、感染管理が不十分な場合もあります。一方、セントマリー女性病院には、退院後に建物の外へ出ることなく産後ケア施設へ移動できるエレベーターがあります。エレベーター内でも非接触式ボタンを採用するなど、感染管理を徹底しています。

分娩室と手術室はもちろん、産後ケア施設の入口にもエアシャワー設備があります。まるで半導体工場に来たかのような光景です。細菌やウイルスを防ぐためです。妊婦専用エレベーターの横には「室内空気質安全区域」と書かれたプレートが掲げられていました。キム院長は「新生児や妊婦は免疫状態が低下しているため、感染管理を集中的に行う必要があります」と強調しました。 

産後ケア施設につながる妊婦専用エレベーター。写真=セントマリー女性病院
産後ケア施設の入口に設置されたエアシャワー設備。写真=セントマリー女性病院

質の高い医療サービスや施設管理に劣らず、同院が特に重視するのが「患者とのコミュニケーション」です。 

病院の口コミを見ると、「医療スタッフや職員の方が本当に親切だ」という評価が最も多く見られます。実際、患者が診療を怖がらず、安心して過ごせるよう、妊婦ヨガなどの産前運動プログラムを運営しています。胎教に役立つ胎教音楽会、胎教映画祭も定期的に開催しています。 

経腟分娩を準備している妊婦には、出産の専門家(助産師)と妊婦が直接会い、出産前の疑問を解消できるプログラムを運営しています。帝王切開が決まった場合も、麻酔科専門医が手術前に妊婦へ直接、手術の流れを説明します。 

キム院長は「必須医療に関わる部分は、現場で体を動かしながら直接行うコミュニケーションが重要です」とした上で、「YouTubeやChatGPTなどオンラインで得られる情報よりも、医療スタッフと対面して悩みや不安、疑問を共有する時間が貴重だと考えています」と話しました。 

患者だけでなく地域社会とも活発に交流しています。2019年には水原市に、多子世帯・未婚の母の家庭のための支援金1000万ウォンを寄付しました。翌年には多文化家庭の健康増進のため、水原西部警察署と業務協約を結ぶなど、地域拠点病院としての役割にも力を入れています。 

少子化・不妊の時代――「出生数が減っても、命への責任は止めません」   

統計庁によると、2025年の韓国の出生数は25万4500人と集計されました。合計特殊出生率は0.8人で、世界最低水準です。 

キム院長が大学病院で研修していた1990年代は、「韓国が滅びても、年間出生数が40万人を下回ることは絶対にない。だから私たちは大丈夫だ」と冗談交じりに話すことがよくありました。しかし、出生数が20万人を下回り得る状況が、目前に迫っています。 

「産婦人科に携わる者として、本当に戸惑う状況にほかなりません。それでも、より少なく生まれている分、命一つひとつをいっそう大切にすべきではないでしょうか。」

それでも産婦人科を取り巻く環境が、ますます厳しくなっているのは事実です。あまりに低い分娩の診療報酬、必須医療の敬遠と人材難など、解決すべき課題が山積しています。

キム院長は「目の前のさまざまな問題を解決できる柔軟な政策が整えられるべきです」と強調しました。その上で、「妊娠と出産は人類が避けて通れない領域であり、AIで代替できない人生のプロセスです。だからこそ希望を持って働かなければなりません」と話しました。 

キム・ドンジュ セントマリー女性病院長。写真=セントマリー女性病院

2026年7月、セントマリー女性病院は開院10周年を迎えます。 

この10年間で、ここでは1万5000件余りの分娩が行われました。毎日のように赤ちゃんの泣き声が響き、多くの親が期待と緊張の中で新しい家族を迎えました。その過程には、救急呼び出しに駆けつけた医療スタッフの徹夜勤務と、数え切れない選択の瞬間がありました。

キム院長は、病院の未来を問う質問に対し、「基本」を挙げました。

「当院の第1の価値は、何より『患者と妊婦、赤ちゃんの健康と安寧』です。最も重要で基本的なことですが、最も実践が難しい価値でもあります。開院当時も今も、病院が追求する価値は変わりません。やってきたことを、これからもきちんと続けられる病院でありたいです。」

出生数は減るかもしれません。しかし、一つの命の尊さが減るわけではありません。10年前、救急車の前でこの世に出ようとしていた双子のように、今日もセントマリー女性病院の分娩室では、新しい命が生まれる準備をしています。そして医療スタッフは、その最初の産声を待っています。

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