
メラトニンのサプリメントは、一般に不眠症の改善に役立つとされています。
メラトニンは脳が分泌する睡眠ホルモンです。 日が沈んで夜になると脳がメラトニンを分泌し、「眠る時間だ」という信号を送ります。分泌が増えると体温が下がり、自然に眠気が訪れて、体の24時間の体内時計が保たれます。
こうした特性から、症状が重くない不眠症の患者が、メラトニン成分を含むサプリメントで対応することもあります。日本でも、処方箋が必要な医療用医薬品として複数の製品が承認されています。メラトニンを含むグミ形状のサプリメントを海外から個人輸入して使用する患者もいます。
メラトニンに痛みの緩和効果は?
オーストラリア・シドニー大学医学部が主導する多国籍研究チームは1日、メラトニンが痛みを減らし得るとする研究結果を、《国際疼痛学会の公式学術誌》に発表しました。
研究チームは、メラトニンの鎮痛効果を扱った無作為化比較試験23件(参加者計2028人)を分析しました。参加者は1日1回、最長90日間、メラトニンのサプリメントを服用しました。用量は1〜10mgと幅がありました。
試験結果を解析したところ、メラトニンは参加者の慢性痛を、100点満点で平均8.96点減らしたことが示されました。慢性痛には、△腰痛 △関節炎 △リウマチ △線維筋痛症などが含まれました。
プラセボを投与した対照群(平均6.76点減少)と比べると、有意な差はありませんでした。
ただし、参加者を無作為に割り付けたうえで、客観的に痛みを測定した研究3件(参加者計176人)だけを別途分析すると、明確な効果が確認されました。メラトニン投与群の痛みの減少は、対照群に比べて平均10.04点大きかったのです。
研究チームは「効果そのものだけを見れば、従来の慢性痛の緩和に用いられる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)より優れた水準だ」と説明しました。
術後痛には効果なし…補助療法として活用できるレベル
研究チームは、メラトニンの作用機序がこうした結果につながった可能性があるとしました。
メラトニンには、細胞にダメージを与える活性酸素の水準を下げ、炎症反応を抑える効果があります。また、痛みの信号を伝える神経細胞が過度に興奮しないよう抑制します。このため、日常生活で痛みの程度が軽くなった可能性があるとみられます。
さらに、睡眠を助けるメラトニンによって参加者がよりよく眠れるようになり、ストレス水準や炎症の指標が低下した可能性もあります。
一方で研究チームは、メラトニンの鎮痛効果だけで既存の鎮痛薬を完全に置き換えるのは難しいとの見方を示しました。人工関節置換術や脊椎手術、骨折手術など、筋骨格系の手術後に生じる痛みを和らげる効果は、ほとんど認められなかったためです。
興味深い点もあります。今回の研究では、メラトニンの服用量が多いほど痛みがより大きく軽減する、という結果は示されませんでした。これに対し、服用期間が長くなるほど、痛みの減少効果もそれに伴って大きくなりました。
研究チームはこれを踏まえ、「メラトニンのサプリメントは、飲んですぐに痛みを抑えるというより、時間の経過とともに体の状態を少しずつ変える作用を持ち得る」とし、「治療を支える補助療法として活用できるだろう」と伝えました。
