
走行中の車内でスマートフォンやタブレットPCなどの画面を見続けると、乗り物酔いを起こしやすい。
背景にあるのは、視覚と耳が受け取る情報の不一致による脳の混乱だ。耳の中の前庭器官は車の揺れや動きを感じ取る一方、目は止まっているスマートフォンの画面に集中してしまう。
身体は加速や減速、回転などの刺激を継続的に受けているのに、画面にはそうした動きが反映されない。このため脳が受け取る信号の整合性が崩れ、結果として強いめまいや吐き気を感じるようになる。
ただ、こうした不快感を和らげやすくする方法もある。アップルのiPhoneには、感覚のズレを抑えるための機能が用意されている。
画面に浮かぶ点、役割は?
アップルは自社製品に「車両モーションキュー」という機能を提供している。車の動きをリアルタイムで画面に反映し、乗り物酔いを軽減する仕組みだ。
iPhone・iPad・MacBookで設定を開き、[アクセシビリティ-動作]を選ぶと、この機能を有効化できる。車両モーションキューをオンにすると、画面の縁に複数の点が現れる。

これらの点は、端末に搭載された加速度計とジャイロスコープ(回転を測定する装置)で車の動きを検知し、その動きに合わせて移動する。車が左折すると点は右側に寄り、急ブレーキでは前方に寄る仕組みだ。
点が動くことで、利用者は固定された画面を見ていても車の動きをつかみやすくなる。点の数・色・大きさを好みに合わせて変えたり、車の動きが検知された時だけ自動で機能がオンになるよう設定したりすることもできる。
サムスン電子のGalaxyなどAndroid端末は、こうした機能を標準では搭載していない。ただし、「KineStop」や「Motion Cues」など、似た機能を提供するアプリをインストールすれば実現できる。
機能公開から2年後に「意外な話題」
アップルが車両モーションキューを披露したのは2024年だが、最近まで利用者は一部にとどまっていた。
ところが今年6月、世界的なIT専門メディア「ザ・ヴァージ」が取り上げたのに続き、先月29日にはBBCもこの機能を「便利なコツ」として紹介。英米圏のiPhoneユーザーの間で小さな話題になった。
米ミネソタ大学の名誉教授、トム・ストフレゲン博士は「脳は筋肉や全身の姿勢を調整するため、あなたがどこへ動くのかを絶えず予測している。運転者が乗り物酔いしない理由もここにある。ハンドルを握っているため、どこへ向かうかを予測できるからだ」と述べた。その上で「車両モーションキュー機能も、これと似た原理で作動しているようだ」と分析した。
