
肺が硬くなっていく特発性肺線維症の進行度を人工知能(AI)で数値化し、今後の病状の進み方を見極めるための目安が示されました。
ソウル峨山病院の放射線科チェ・ジュエ教授、呼吸器内科キム・ホチョル教授、サムスンソウル病院の放射線科イ・ホヨン教授の共同研究チームは3日、AIで胸部コンピューター断層撮影(CT)画像を解析したところ、1年間で肺の線維化スコアが4.05%ポイント以上上昇すると、死亡または肺移植に至るリスクが高まることを示すカットオフ値を確認したと発表しました。研究結果は5月24日、国際学術誌〈米国呼吸器・集中治療医学ジャーナル〉のオンライン版に掲載されました。
研究チームは、ソウル峨山病院の患者データでカットオフ値を導いた後、サムスンソウル病院の患者でも同じ結果が得られるかを検証しました。過去の診療記録を解析した研究です。
肺機能検査では捉えにくい変化、CTで確認
特発性肺線維症は、明確な原因がないまま正常な肺組織が瘢痕(はんこん)のように変化する病気です。「特発性」は原因が分からないことを意味します。「線維化」は、柔らかかった組織が瘢痕のように厚く硬くなる変化を指します。
病気が進行すると肺が硬くなり、深く息を吸い込みにくくなります。肺から血液へ酸素を受け渡す能力も低下します。すでに損傷した部位は元の状態に戻りにくいため、進行速度を早期に把握することが重要です。
現在は主に肺機能検査で病状の進行度を評価します。努力性肺活量は、最大限に息を吸った後、できるだけ強く最後まで吐き出した空気の量を測る検査です。一酸化炭素肺拡散能検査は、肺が酸素などのガスを血液へどの程度うまく移送できるかを示します。
これら2つの検査は肺全体の機能変化を把握するのに有用です。ただ、肺のどの部位がどれほど硬くなったかまでは分かりにくいという課題があります。患者の検査協力度や検査時の呼吸状態によって測定値が変動し得るという限界もあります。
CTでは肺の内部を直接確認できます。ただ、わずかな変化を医療者が目視だけで比較するのは容易ではありません。読影者によって判断が異なる可能性があり、1年前より硬化した範囲がどれほど広がったかを正確な数値で示すことも難しい状況でした。
網状・蜂巣状の変化を合算し線維化スコアを算出
研究チームはAIソフトウェアを用い、CT画像で「網状陰影」と「蜂巣状陰影」が占める範囲を自動計算しました。
網状陰影は、CTで細い線が網目のように絡み合って見える所見です。蜂巣状陰影は、損傷が進んだ肺で小さな空気嚢(のう)が幾重にも集まって見える所見です。研究チームは、これら2つの所見が肺全体に占める割合を合算し、「線維化スコア」として示しました。
研究チームはまず、ソウル峨山病院で特発性肺線維症と診断された患者524人のデータを解析しました。対象者は初回検査と約1年後の追跡検査で、CTと肺機能検査の両方を受けていました。
続いて、同じ条件を満たしたサムスンソウル病院の患者224人にこの基準を適用しました。1つの病院で導いた基準が、別の病院の患者にも当てはまるかを確認するためです。
患者748人全体の初回CTと1年後の画像を比較した結果、線維化スコアが上昇するほど、肺機能検査でも病状が悪化していることが示されました。
努力性肺活量が5%低下した場合、線維化スコアは平均2.72%ポイント上昇しました。一酸化炭素肺拡散能が10%低下した場合は、平均4.52%ポイント上昇しました。
1年で4.05%ポイント上昇なら死亡・移植リスク2.78倍
死亡または肺移植のリスクを最もよく判別したカットオフ値は4.05%ポイントでした。初回検査より1年後の線維化スコアがこの基準以上に上昇した患者は、死亡または肺移植に至るリスクがより高くなりました。
サムスンソウル病院の患者データでも同様の傾向が確認されました。年齢や性別、既存の肺機能など影響し得る要因を考慮した後でも、線維化スコアが4.05%ポイント以上上昇した患者は、死亡または肺移植に至るリスクが2.78倍高い結果でした。観察期間を3年に限定すると、そのリスクは2.88倍でした。
この数値は、患者個人の死亡確率が単純に2.78倍に上がるという意味ではありません。研究期間中に死亡または肺移植が発生する相対的な速度が、それだけ速かったことを示します。
論文で紹介された75歳の患者は、線維化スコアが1年で11.66%から15.77%へ上昇し、同期間に肺活量と肺拡散能も低下しました。
研究チームは、性別・年齢・肺機能に基づいて経過を見積もる従来の評価法に、初回CTの線維化スコアと1年間の変化量を加えました。その結果、死亡または肺移植のリスクを見分ける能力が高まりました。
このようにAI解析は、肺機能検査だけでは把握しにくい画像変化を数値で示す補助指標になり得ます。

線維化スコアだけで治療を決めるのは時期尚早
ただし、4.05%ポイントというカットオフ値を直ちに治療変更の基準とするのは時期尚早です。過去の診療記録を解析した観察研究であるうえ、別の病院で結果を確認した患者も224人でした。CT撮影装置や撮影方法、AIプログラムが異なっても同じ基準を適用できるかどうかは、追加研究が必要です。
今回の研究だけで、すべての患者が毎年CT検査を受けるべきだと判断することもできません。CTを繰り返し撮影すると放射線被ばくが生じるためです。
したがって、線維化スコアだけで治療法を変更してはいけません。肺機能や症状、血液が酸素でどの程度飽和しているかを示す酸素飽和度、CTの変化を併せて評価する必要があります。
患者は診察室で、自身の線維化スコアが昨年より何%ポイント変化したのかを尋ねることができます。2回のCTが近い条件で撮影されたか、肺機能も同じ方向に変化しているかを確認することも重要です。
チェ・ジュエ教授は「今回の研究は、臨床的に意味のある線維化スコア変化のカットオフ値を提示し、今後、特発性肺線維症患者の定期的な追跡観察と治療戦略の策定において、CT定量解析技術が補助指標として活用され得ることを示しました」と話しました。
キム・ホチョル教授は「特発性肺線維症で肺が一度損傷すると回復が難しいため、早期診断と治療が非常に重要です」としたうえで、「今回の研究は、特発性肺線維症の病勢進行度を客観的に評価する基準を確立し、今後の臨床試験で治療効果を検証する画像バイオマーカーとして活用される可能性を確認した点で意義が大きいです」と述べました。
画像バイオマーカーとは、CTや磁気共鳴画像(MRI)などに現れる変化を数値化し、疾患の進行や治療効果を判断する指標を指します。
