サウナの健康効果はここまで…認知症・心血管・呼吸器疾患から、うつ病予防まで

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米国の若い世代でサウナの健康・文化的魅力が人気 〈br/〉サウナ→水風呂→休憩後の「トトノウ」状態を楽しむ 〈br/〉この状態では脳波の調整により脳の効率が向上 〈br/〉サウナは軽いジョギング程度の心血管効果 〈br/〉認知症の発症が減り、うつ病・呼吸器疾患にも有用

ガラス越しに外がはっきり見えるサウナ室で温熱浴を楽しむ欧米の人々。 汗をかく軽いジョギングをしたのと同程度に心血管に役立つ。 近年、米国の若年層でサウナが流行している。写真=ゲッティイメージバンク

フィットネスクラブに行くと、運動はそっちのけでサウナだけに入る人が少なくない。「時間がないから」「体力が足りないから」 など理由はさまざまだ。そうすると利用料がもったいないのでは、と思うこともある。

しかし実は、サウナだけでも健康に役立つという研究結果が相次いでいる。 さまざまな要因や背景はあるだろうが、入浴に熱心な日本が世界有数の長寿国であることを見ても、入浴と健康の関係に関心が向くのは自然だ。 海外の医学・公衆衛生系ジャーナルの論文や健康メディアの記事をもとに、サウナが私たちの健康にどのように役立つのかを整理した。

サウナ、米国でウェルビーイング・トレンドを牽引

米国の公共ラジオ放送(NPR)は今月初め、「米国でサウナがウェルビーイングのトレンドを席巻し、長い伝統を持つサウナの効能を享受しようとする新世代を引きつけている」と報じた。 関心の高まりに伴い、サウナ体験を提供する産業が成長しており、 サウナフェスティバルを開催する地域も増えている。

ニューヨークとミネアポリスでは、すでにサウナフェスティバルが定期的に開かれている。 シアトルでは昨年秋、地域のノルディック博物館の屋外に設置した仮設のサウナ村で、初のサウナフェスティバルが幕を開けた。 サウナ村では、丸太造りの温熱サウナや温浴・水風呂、 さらにキャンピングトレーラーを改造した移動式サウナなど、多様な形態のサウナ施設が参加者に体験の機会を提供した。

サウナ後の心地よい状態「トトノウ」…実は脳波調整の効果

NPRは、米国の若い世代の間で、サウナ後のだるさと心地よさが同居する状態である 「トトノウ」にハマる人が増えていると報じた。 米国でサウナを楽しむ人が増えた理由の一つが、まさにこの 「トトノウ」 状態を味わうことが流行しているため、というわけだ。

トトノウ状態を研究した論文もある。2023年 1月に発表された 「サウナ入浴が誘発する神経変化に関する研究:『トトノウ』状態の神経学的基盤(A study on neural changes induced by sauna bathing: Neural basis of the “totonou” state)」である。 医薬分野のオープンアクセス出版社である 「パブリック・ライブラリー・オブ・サイエンス(PLoS)」が発行する PLOS ONEに掲載された。 日本の脳波測定企業であるヴィー・スタイル(Vie Style)による投稿だ。

ここでいうトトノウ(totonou・整う)は日本語で、 「整う」「調和する」「備わる」といった意味を持つ。 主にサウナ後に水風呂と休憩を挟むことで、心身が澄みわたり穏やかになる最上の快感状態(サウナハイ)を指す言葉として用いられる。

脳波を観察した結果、脳がより効率的な状態に到達したことが示された。 この状態で脳に行動課題を与えたところ、遂行時間が有意に短縮した。3段階のサウナを行い、心地よい トトノウ状態に至ると、脳がより効率的な状態になるということだ。

サウナは心血管系を刺激し、軽いジョギング並みの健康効果

人体は熱に触れると、さまざまな反応によって心身の健康を守ろうとし、 その過程で健康効果が得られる。  写真=ゲッティイメージバンク

サウナの効果は多岐にわたる。 サウナの熱に触れたとき、最も直接的に実感しやすいのが心血管系への刺激効果だ。 体温調節と健康効果を研究してきた米オレゴン大学の人体生理学者クリストファー・ミンソン博士は NPRに対し、 「サウナには運動と似た仕組みで心血管系を刺激する効果がある」と説明した。 身体は周囲の温度が急に上がると血管が拡張し、心拍数が増加して血液が皮膚へ集まり、発汗が起こる。 その結果、体が冷える。 運動で心拍数が上がる際に起こる過程とかなり似ている。 複数の研究によれば、サウナの熱はこのように運動と類似した形で心血管系を強化する、というのがミンソン博士の見解だ。

スイス・ベルン大学の運動科学者サシャ・ケッテルフート博士は、 「研究の結果、サウナに入ると軽いジョギングのような身体活動を行った場合と同様に、血圧と心拍数が上昇することを確認した」と述べた。

ケッテルフート博士によると、温度が摂氏 80~93度程度に保たれる伝統的なフィンランド式サウナに入ると、身体には即座にストレス反応が引き起こされる。 急性ストレス反応が起こると、身体はそれに対応するため交感神経系が活性化する。 ストレスや緊張で交感神経系が活性化すると、心拍数が増え、汗が流れるなど、 「闘争・逃走(fight-or-fight responde)」 反応が続く。 これは運動時も同様だ。 運動やサウナ、 ストレスなどで緊張していた神経系は、こうした状態が過ぎると落ち着き、これらの過程を経ることで心血管系の健康指標が改善する。

カナダ・マニトバ大学の循環器専門医セトル・クヌチョル博士は、 「最適な心血管の健康改善効果を得るには、週に少なくとも 3~4回、 1回あたり少なくとも 15分はサウナを利用すべきだ」と助言した。

サウナを頻繁に利用すると、認知症・アルツハイマー病の発症リスクが大きく低下

サウナ利用が多いほど、認知症とアルツハイマー病の発症率が低下するという研究結果も報告されている。『Age and Ageing』2017年 3月号に掲載された 「サウナ入浴はフィンランドの中年男性における認知症およびアルツハイマー病の発症率と逆相関する(Sauna bathing is inversely associated with dementia and Alzheimer's disease in middle-aged Finnish men)」による。

平均 20.7年の追跡観察の結果、男性集団の認知症発症リスクは、週 1回のサウナ利用者を 1とした場合、週 2~3回の利用者は 0.78、 週 4~7回の利用者は 0.34となった。 アルツハイマー病の発症リスクもそれぞれ 0.80と 0.34と低い水準だった。

サウナなどの温熱療法で抗うつ効果も

ウィスコンシン大学マディソン校の精神医学・人間生態学教授チャールズ・レイソン博士は NPRに対し、 「一定時間、身体に高温を加えると、かなり有効な抗うつ効果が得られる」と述べた。 レイソン博士は、 「体温調節を担う脳と身体の経路が、気分・欲求・感情状態を担う経路と大きく重なっているためだ」と理由を説明した。 ここでいう高温には、サウナはもちろん、さまざまな形態の温熱療法が含まれる。

同氏は、2016年に少数ではあるが約 30人を対象に行った無作為化比較試験で、全身高温療法を1回受けただけの群でも、対照として偽治療を受けた群より、うつ症状が有意に減少したことを示す研究結果を紹介した。

この研究によれば、身体が熱に曝露されると、インターロイキン-6(IL-6)という免疫シグナル伝達分子の値が急激に上昇し、これがうつ症状の改善と関連している可能性がある、というのがレイソン博士の推定だ。IL-6は炎症反応の初期や感染時に免疫細胞から分泌される分子で、体内の防御作用を活性化する。 ただし IL-6は過剰に分泌されると、関節リウマチや慢性炎症を引き起こす可能性がある。

喘息・肺炎など呼吸器疾患の予防にも有用

別の研究では、サウナが呼吸器の健康にも役立つことが示されている。 英国ブリストル大学医学部と、フィンランド東部大学の保健・臨床研究所による 2017年の研究がそれを示す。 それによると、サウナ利用頻度が高いほど、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、 喘息、 肺炎を含む急性および慢性の呼吸器疾患の発症頻度が低下した。

42~61歳の白人男性 1935人を対象に、平均 25.6年の追跡期間で発症を調べた結果である。 週 2~3回のサウナ利用者の呼吸器疾患全体の発症リスクは、週 1回以下の利用者に比べ、 95% 信頼区間で平均 27%低かった。 肺炎の発症リスクは、週 2~3回の利用者が週 1回の利用者より 27%低く、 週 4回以上の利用者は 37%低かった。

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